モビゾウ研究室

ツイッター(@Movizoo)で語りきれなかったこと

鬱病について考えたことを書いてみた

突然ですが、今日はうつ病・うつ症状について体験者にしか書けないことを書き留めておこうと思います。

 

というのも最近、身近にうつ病やうつ症状の診断がくだる人が増えているのですが、どの人も「本当に自分はうつ病?」という認識であることが多いのです。世の中で言われているうつ病の症状のイメージと自身の状態が微妙にズレていること、元から頑張り屋の人が多いので「自分はまだ頑張れる」と思いこんでしまっている場合が多いことが原因かと思います。

 

けれども、私はそうやって「私って実はうつ病じゃないよね?」「もう治ったかも?」という勘違いをしていたところ、寛解に三年を要し、さらに何年もたった今でも後遺症に悩まされています。侮るべきではなかった、これはれっきとした病気なのだ!と気づいたのは最近のこと。

 

ネットで言われているような一般的なうつ病の症状(気持ちが沈んで涙が止まらない…食欲がない…睡眠がとれない…)といったようなことが完全に当てはまるようになるのは、うつがかなり重症になったときであることも多く、また、人によっては「甘えちゃいけない」と思って身体症状しか出ない場合もあります。

 

私の周りでうつと診断された人たちは、普通に食事も美味しそうに食べていたし、夜も眠れていたし(ただし何度も目が覚めるなど、質の問題はあったらしい)、仕事もはたからみたら致命的なほど遅滞している感じではありませんでした。ただ、毎朝毎朝、原因もなく吐いてしまう。職場にくると、「今日は体調がいいな」と思っている日でも、予告なく突然吐き気が襲ってきて、吐いてしまう。ただ、それだけでした。

 

私がうつと診断されたときもそうでした。「気持ちが落ち込んでいる」という自覚はほとんどなかったです。食欲はもとから旺盛なほうでもなかったので、特に注意していませんでした。自覚症状としてあったのは、突然くる貧血、吐くほどひどい肩こり、耳が詰まって聞こえにくくなったり、喉がつまったようになる症状、そして朝3時とか4時に目が覚める症状でした。涙が流れるとか朝起き上がれないとかがあれば自分でも気づけたのですが、自分の気持ちとしては至って元気。だから、心療内科でかなりうつの症状が重いですね…と言われたときは、なんのことやらわかりませんでした。

 

うつと診断されてから、私は狂ったように人と連絡をとり、会ったり飲んだりする日々が続きました。そして、会っていろいろ励まされては、「なんだか人生が上向いてきた気がする!」と喜んでいました。うつの人には頑張ってと言ってはいけない、という話が有名だったので、励まされてもちっとも落ち込まない自分は、うつじゃない!と確信していました。

 

今思うと、これはうつの仕業である「焦燥感」から引き起こされる行動だったのですね。いてもたってもいられない。とにかくじっとしていられない。人生の先行きが不安で不安で、行動することでそこに目を向けないようにする。

 

身体症状が出ることと、行動すること、というのは、実はうつ病では同じ機能を果たしていると思います。どちらも、「ストレスの根本」あるいは「ストレスで自分がつぶされかけていること」から、注意を逸らす役割があるのです。うつ病になったら、まずは自分が極限的なストレスに晒されていることを自覚しなければ治療など進まないわけですが、行動することによってそのストレスを見ないようにできてしまいます。あるいは、身体症状に注意を取られることによって、ストレスを感じている自分から目を逸らそうとします。真面目であれば真面目であるほど、そういう方向にいきがちなのです。結果、気づいたときには、治るまで何年もかかるほどの重い状態に移行しているのだと思います。

 

うつと診断されても、人と会いまくって、励まされて、一念発起して環境を変えて!ということを続けた私は、遂に起き上がることができなくなりました。うつの影響で血流が滞って、化粧をしても能面のような顔。夏でもガタガタ震えるほどの冷え。人に会うことなどとてもできない日々が続きました。

 

そして、慢性的に気分が塞ぐわけではないのが曲者でした。慢性的に気持ちが塞ぐのではなく、調子が良いときと悪いときというアップダウンの差が大きいのです。 なので、調子が良いときは、「なんか良くなったかも!治ったかも!」と勘違いをしてしまう。そして無駄に活動してしまい、その後地獄のようなうつがやってくる。治ったと勘違いした後のうつは、それこそ生き地獄でした。私のうつ治療の場合は、慢性的なダウンを改善するというよりは、アップとダウンの差を埋めていく作業という感じでした。(このあたりは躁うつ病の可能性もあったので、該当しないかもしれませんが)

 

なんだか周りで「うつ病じゃないのに、うつとか診断された。私、甘えてない?」というような認識の人が結構多くて、昔の自分を思い出したので記事にしてみました。

 

甘えてないんです。うつの典型的な症状が出る前に、自分が極限的なストレスを感じていることを自覚したほうが絶対良いです。典型的な症状を基準にして考えると、自分がストレスでつぶれかけていることも気づかず、症状を悪化させてしまいます。「がんばって」と言われて辛くなる人ばかりじゃないのです。「まだまだ頑張れる」と思いながら、知らず知らずのうちに坂道を転がり落ちるように症状を悪化させていく人が沢山います。

 

気持ちが沈んでいなくても、まだまだ頑張れると思えても、体の声をしっかり聞ける力をつけること。これが大事なんだなあと、私は三年間のうつ病期間を通して、感じたのでした。